<無意識の刺激>

■推論
筋肉が弛緩不全を起こし、その状態が持続することで整形外科の病気を発症するという理屈を説きはじめた頃、弛緩不全にいたる原因について、頻回の酷使による疲労性と、逆に長時間同一姿勢を継続することで生じる廃用性があると考え、慢性的な脱水や寒冷刺激、あるいは精神的ストレスや喫煙習慣が、その状況に拍車をかけるものと推論していた。

■脳の機能不全
この7年間で、それらの推論は概ね正しかったことが確認できた。そして、弛緩不全の原因は、いずれも患者本人には自覚のないことが共通していた。例えば、慢性的な脱水状態や、寒冷刺激は、どちらも患者本人には自覚がなかったのである。それは、口渇や、暑さ、寒さを感じる脳の機能不全が関係しているものと考えられた。

■無意識の寒冷刺激
小児や高齢者では、脱水でも喉が渇かず、寒い環境にいても、寒いと感じない。この故に、筋組織内脱水を呈することは勿論、無意識のうちに長時間の寒冷刺激にさらされることで、肉体は体温を維持しようとして筋肉を収縮させ、そこに弛緩不全を生じてしまうのだ。秋ごろの発症で冬季に治りかけていた多くの患者が、寒気の到来とともに足並みをそろえて症状を増悪させたため、この寒冷刺激の存在を意識せざるを得なかったのである。

■無意識のストレス
この他、神経伝達それ自体の機能不全によって、収縮した筋肉を弛緩に転ずることがうまくできない現象も確認できた。小児では未発達故に、高齢者では機能衰退の故にである。子供も老人も、体の力を抜くことが上手にできないのだ。おそらく、今後は無意識の精神的ストレスで筋肉に弛緩不全を生じている症例を蓄積させていくことになるのだろう。

<健康になりたければ>

■堕落のわけ
さて、かくある経営コンサルタントが病院に入ってきた理由は、当時、医療費高騰の名のもとに、苛烈な医療費削減が行われていたからだ。20年以上前から、医療費が日本の財政を食い潰すという危機感を煽った一人の厚労省役人の発想に従い、国は無分別に医療費を削減してきた。同じころから米国の保険会社のコマーシャルをテレビでみかけることが多くなり、医療業界では国民皆保険の存続が危ぶまれる声をきくこともまた多くなっていた。即ち、国政の故に病院は商店へと堕落せざるを得なかったのである。

■過剰な医療
しかしながら、実際問題、この医療費高騰論にはほとんど根拠がなく、後に、過剰な医療費削減の実態が明らかとされるに至った。とはいえ、一度堕落してしまった医療業界は、商魂たくましく利益を追求する性癖を手放せなくなっていたのだ。この故に、本来、高齢者にはできるだけ自然な形で天寿を全うできる簡素な医療を提案すれば良いものを、過剰に手を加えて利益に還元しようとするわけである。死に至る自然な過程を病気に見立ててしまえば、どんな治療もまかり通ってしまう。皮肉なことに、国が医療費削減を進めた結果、医療費の無用な肥大化を招いてしまったのだ。それが証拠に、過剰な医療を施さない北欧に寝たきり老人はいない。寝たきりになるずっと以前に旅立てるからだ。寝たきり老人がいなければ、その分医療費も安く上がる。そもそも、歩けなくなった老人を無理やり歩かせる必要もなく、食べなくなった老人を無理やり食べさせる必要もないのだ。それらは皆、死に赴くのに必要な過程の一つに過ぎないのだから。

■稼ぎになる治療
整形外科学においては、手術適応という考え方がある。特定の疾患に対し、患者本人の年齢、職業、社会的背景などに応じて、手術の必要、不必要を判断するのだ。だが、大病院においてはこの手術適応が拡大する傾向が生じる。理由は簡単。手術を行った方が稼ぎになるからだ。かつて、米国で悪名高いロボトミー手術が盛んにおこなわれた経緯も、理由はそこにあった。
もとより、患者は誰もが皆、手術を受けたくて受けるわけではない。それ以外に治る見込みがないと医者に言われるから仕方なくするだけだ。本当は生活を正しさえすれば、時間をかけるだけで自然治癒力が働き、何もしなくて良い場合が多々あるにもかかわらずだ。けれども、それでは稼ぎにならないから、無用な治療が次々と施されるのである。

■AIの提案
つい最近、AIからなされた提言は大変興味深いものだった。
「健康になりたければ病院を減らせ」であったという。

<患者様とお医者様>

■患者さんから患者様へ
かつて勤務医時代のある時、接遇改善と称し、患者を様付けで呼ぶよう病院から指導があった。おそらくは浅はかな経営コンサルタントの指南に基づく要請だったのだろう。同じ頃からお医者様という言葉もまた、死語になったような気がするが、当時から今に至るまで、そういう風習には大反対だ。確かに、患者の側は、様付けで呼ばれれば悪い気はしないのかもしれない。しかし、この風習は患者にも病院にも悪しき勘違いをもたらすことになると思ったものだ。

■勘違いする患者様
「お金を払って治療を受けているのに、治らないとは何事か」と、まるで病気が治らないことを医者のせいであるかのように怒り出す患者「様」がたまにいる。そういう手合いほど、外来で待たされれば文句を垂れ、医者の指導にも非協力的で、病院をころころと自分勝手に変えては病気を悪化させていく。要するに、患者の様付けは、もともと勘違いしやすい輩を勘違いさせてしまうのに役立つだけなのだ。

■患者様はお客様
一方、様付けの悪影響は患者の側のみにとどまらない。病院が患者を様付けで呼ぶことによって、患者のことを、儲けをもたらすお客様として扱うようになる。これがなぜ問題であるかといえば、お客様を相手にする医者は、患者にできるだけ肉体的、経済的負担をかけないよう治すことを目的とするのではなく、患者の負担など二の次三の次、できるだけ稼ぎになる治療を施すことを目的とするようになるからだ。

■甘やかされる患者様
実際、これは現在の病院のあり方に大なり小なり反映されているといってよい。保険で許される範囲内で稼ぎにすることが目的に据えられるので、儲けにつながる患者は手厚くもてなされるが、そうでない患者はすぐにお払い箱というわけだ。日本の医療制度がそれに拍車をかけている現実もある。
かくして医者の頭の中は、どれだけ効率よく治療費を患者からふんだくれるかという発想が支配的となっていく。
この故に、生活習慣や受診態度について、本来ならば医者に厳しく叱責されるべき患者が甘やかされ、金づるとして珍重される事態を生ずるのだ。だが、それは結局、患者のためにならないのである。

■お医者様の不在
元より患者は医者を頼っている立場で、医者は患者に頼られているという責任を負っている立場だ。なるほど商売において、お客様は神様なのかもしれないが、医療においては、医者の側が神様の代理人としての責任を負うのである。ところが、患者を患者様と呼ばせる風習は、この責任の所在を曖昧にしてしまい、病院をして聖域から商店へと堕落させる。患者は、患者様ではなく、患者さんだ。そして医者は、お医者様として、全力で神様を演じなければならない存在なのだ。

<Medical Dynamic Stretchingの実際⑨足関節と趾>

■予防と治療を兼ねるMDS
Medical Dynamic Stretchingを治療に用い始めて7年余り。子供の骨端症、アスリートのスポーツ障害、成人の変形性関節症と、年齢を問わず、また、疲労性、廃用性の別なく、それらの治療においてMDSには明確な効果を認めることができた。この事実が、とりもなおさず整形外科の慢性疾患は、おしなべて筋肉の慢性弛緩不全に由来するという証だろう。
さらにいえば、MDSは治療に有効であるだけでなく、怪我の予防法としても有用であると考えられた。
例えば、アキレス腱断裂には腓腹筋とヒラメ筋の弛緩不全が先行しており、それらの弛緩不全をMDSでコントロールできていれば、防ぎ得る怪我だというわけである。また、膝前十字靭帯損傷なら、腸腰筋や大腿、及び下腿筋群の弛緩不全がメンテナンスできてさえいれば、これまた防ぎ得る怪我だと考えられた。

■怪我の原因は不運にあらず
経験上、外来でよく診る足関節捻挫の類もまた、患者の不運によって起こっているのではなく、下腿筋群の弛緩不全が誘因となって受傷している印象がぬぐえない。弛緩不全の故、瞬時に適切な回避行動をとることが難しくなっているのではないだろうか。実際、足関節外側靭帯を損傷する子供は、手術による加療を行ったとしても同様の怪我を繰り返すので、手術自体に意味を見出せない場合がある。
こうした怪我に対し、MDSによる予防効果を統計学的に証明するのは難しいが、ここでは、下腿部において患うことの多い怪我や骨端症、慢性疾患の類の治療に効果を認めた足関節と足趾におけるMDSの実際を詳述する。

■他動的に行うMDS
治療家によって他動的に施術する場合、術者の右側に患者の両足が向くよう患者を仰臥位で寝かせ、患者の足関節直下に小枕を敷く。この状態で患者には脱力を促しつつ、術者は左手で患者の下腿部にある筋肉群のこわばりを確認しながら、右手で患者の足のMTP関節をつまんで小刻みに繰り返し足関節を底背屈させる。リズムは3ヘルツ程度。可動域を目いっぱい使うのではなく、半分程度の可動域で行うだけで良い。
100回も行えば下腿筋群は弛緩するので、腓骨筋腱炎、舟状骨の後脛骨筋腱付着部炎、有痛性外脛骨症、足背の前脛骨筋付着部炎、アキレス腱炎、及び踵骨のアキレス腱付着部炎などに奏功する上、ギプスによる足関節の外固定後のリハビリとしても有用だ。次に、左手で患者の足を把持し、右手で患者の足趾をひっかけるように底背屈させる運動を繰り返し100回程度行うと、足底の筋肉群をも弛緩させることができる。これを先の運動とあわせて行うと、セーバー病や足底腱膜炎、フライバーグ病などにも有効だ。リズムは同じく3ヘルツ程度が望ましい。
実際、筋組織内脱水を認めない患者にこれらを施術した場合、その効果があまりに絶大であるため、「まるで魔法のようだ」という感想を頂戴することもしばしばだ。

■独力で行うMDS
一方、患者が独力でMDSを行う場合、両足底を床につけた状態で椅子に腰かけ、膝関節90度屈曲位から少し足を前に出した位置で、踵を支点にしてつま先を二センチ程度小刻みに上下させる。底屈時には、つま先が床につくよう脱力する必要がある。リズムは3ヘルツ以上。連続して行うと、前脛骨筋が硬化してくるので、そうなる前に踵の位置を膝関節屈曲90度に戻し、この位置でつま先を支点にして踵を2センチ程度小刻みに上下させる。これも必ず踵が床につくよう脱力して行うのがポイントだ。どちらも貧乏ゆすりの要領で脱力を意識しながら、互いを数十回ずつ交互に繰り返し行う。前者は下腿屈筋群を弛緩させ、後者は前脛骨筋を弛緩させる。
次に、椅子に腰かけた姿勢のまま膝を伸展し、踵を床につけて足趾を連続して底背屈させると、足底の筋肉群を弛緩させることができる。この運動に加え、足趾を内外転させる運動を行うと、中足骨と中足骨の間にある骨間筋を弛緩させられるので、モートン病にも有効だ。足趾の底背屈と内外転も十回ずつセットで行うと良い。内外転は自動運動が困難な場合、自分の手指を用いて他動的に行っても良い。
この方法は、進行性の外反母趾にも効果があったが、行った回数に効果が比例するので、一日に数百回以上、行う必要がある。

■神経伝達機能の活性化
上記に加え、足関節を支点にしてつま先を時計回り、反時計回りに回転する自動運動を十回ずつ交互に行うと、下腿筋群の神経伝達機能の改善につながり、筋肉の協調運動が滑らかになって、足関節捻挫の予防につながる。ただし、慣れない間は力が入って弛緩不全を生じてしまう場合もあるので、最初は少ない回数で始めた方が良い。筆者は足関節外側靭帯損傷後、靭帯の癒合を得た患者については、受傷後6週から、徐々にこの運動を加えるよう勧めている。そもそも、子供たちにこの運動をさせると、動きがぎこちなくなってしまうケースが多い。つまり、子供たちは神経伝達機能の発達が未熟であるため、下腿に弛緩不全を生じやすいのである。
実際、これらのテクニックを空手道場の師範に伝授したところ、道場の子供たちの足のトラブルが激減したという報告を受けた。筆者自身は、学生時代の足関節捻挫後から続く運動時のテーピング生活を、これらのMDSによって卒業できたという次第だ。

■課題
MDSを行うようになってからの症例は5千を超えた。この間、期待された割に結果が今一つというケースもわずかながら存在したが、顎関節症を含め、理論上、効果の予想された、ありとあらゆる整形外科疾患で概ねMDSは有効だった。
また、MDSは交通外傷後の治療にも有用で、ムチウチと呼ばれる頚椎捻挫の類は頚椎周囲の筋肉に弛緩不全を生じていることが難治化の要因になると考えられた(交通外傷の患者の場合、MDSを指導しても、まじめに取り組まない患者が多かったのだが)。
当然、交通外傷に限らず、他の外傷や術後においても、リハビリの一環としてMDSは有効だったが、高齢者では患者本人がMDSの正しい方法を会得するのに困難が伴うだけでなく、会得できたとしても、短期間で違うことをし始めるので、頻回の通院指導が必要だった。
とはいえ、この方法が広く世間に知られるようになれば、アスリートの多くが選手寿命を延ばせるであろうし、整形外科手術のご厄介にならずに済む患者が増え、将来の医療費削減につながるに違いない。
もっとも、そのためには今日の整形外科学が、自らの過ちに気づく必要があるだろう。
せっかくMDSによって治りかけていたにもかかわらず、テレビの健康番組の影響で筋力強化を行い、症状を増悪させる症例が後を絶たないからだ。

<症例提示③>

24歳女性 事務職 

S)1週間前から背部痛あり、徐々に増悪してきたため当院受診。

O)胸椎部の棘突起直上に痛みがあり、圧痛並びに叩打痛を認めた。
上体前屈で疼痛増強。
第一肋間に圧痛を認めたが全身の圧痛は軽微。
腸腰筋に筋硬直を認めるが圧痛無し。
仕事で長時間座位を続ける。
体重51㎏。水分摂取は1~1.5ℓ。
カフェイン摂取は緑茶500ml以上(水筒に入れて毎日飲む)。
レ線所見にて胸椎に明らかな異常を認めず。
平背傾向。
腸腰筋を弛緩させるMedical Dynamic Stretchingを行うと、背部痛は直ちに三分の一程度に治まった。

A)慢性脱水症があり、長時間座位を継続することで腸腰筋、及び広背筋に弛緩不全を生じ、その結果生じた力学的負担が高じて胸椎レベルの棘上靭帯に炎症を来したもの。腸腰筋の弛緩不全は廃用性で、棘上靭帯にかかる力学的負担は牽引負荷だと考えられた。

P)水分摂取とカフェイン制限、及びMDSの励行を勧めた。投薬は無し。

初診から5日目。
第一肋間の圧痛及び背部痛は消失した。

本症例も、筋肉の弛緩不全や慢性脱水の概念を持たない医者が診れば、MRIを撮っても明らかな異常が認められず、ただ闇雲に消炎鎮痛剤が処方され、原因不明の背部痛として扱われていた可能性が高かったことだろう。

<症例提示②>

70歳女性 無職 高血圧症にて近医通院中。

S)10年以上慢性的に腰痛があるが、6週間前から誘因なく腰痛及び右臀部痛が増強し当院受診。
両手指に変形があり、変形性CM関節症、ヘバーデン結節、ブシャール結節にて大学病院通院加療中。

O)初診時、第一肋間に著明な圧痛。全身に線維筋痛症の診断基準を満たす圧痛を認めた。
体重48㎏。一日水分摂取量は1ℓ未満。
カフェイン摂取は一日当たりコーヒー二杯、紅茶二杯、緑茶三杯。
脊柱に叩打痛を認めず、SLRテストは陰性。
鼠蹊部の腸腰筋領域に圧痛と筋硬直を認めた。
腸腰筋の弛緩を促すMedical Dynamic Stretchingで腰痛増強傾向あり、即座にこれを中止した。
レ線上は側弯症及び変形性腰椎症の所見。手指には複数の変形性関節症所見を認めた。

A)腸腰筋及び殿筋の弛緩不全による変形性腰椎症の一時的増悪。手指の変形性関節症及び慢性脱水症。
高血圧治療薬の副作用やカフェインの過剰摂取による慢性脱水症で全身の筋肉に弛緩不全を生じており、この結果、腰椎や手指に関節破壊が進んでいるものと考えられた。
腰痛増悪の原因は季節変化に伴う寒冷刺激が弛緩不全を助長したためであると考えられた。

P)カフェインの制限、血圧に注意し乍らの一日1500ml以上の水分摂取を勧めた。
テルネリン1錠眠前内服、アリナミンF朝食、夕食後1錠内服、ノイロトロピン朝食、夕食後2錠内服を処方した。

初診から三日目。
第一肋間、及び全身の圧痛は消失。
外来で腸腰筋及び前腕筋群のMDSを施行したところ、腰痛は初診時比較で二割六分、手指の痛みは三割まで軽減した。MDSを自宅で励行、継続するよう指導した。

初診から七日目。
腰痛はほぼ消失、初診時比較で一割未満となり、十年以上続く手指の関節痛は一割五分となった。

この女性はインテリジェンスが高く、MDSを少ない受診回数で正確に再現できた稀有な症例であった。
実のところ、高齢者ではMDSを再現できずに間違ったやり方で症状を増悪させる場合もある。また、水分摂取が目標量に届かない場合や、患者がMDSを十分に行わない場合にも、これほどの治療効果は得られない。
しかしながら、この症例のごとく、患者自身が理論と方法の正しい理解を得、MDSを正確に再現できさえすれば、ほとんど鎮痛薬の類を必要とせず、自ら症状をコントロールすることができるのである。
この症例は、慢性脱水と筋肉の慢性弛緩不全という概念を持たない整形外科医が治療にあたれば、例えそれが大学病院のエキスパートであっても、ありふれた慢性疾患でさえ、難治性となってしまう場合がある好例だといえるだろう。
へバーデン結節は、よく言われる女性ホルモン低下などとは全く関係がなく、前腕の筋肉群の弛緩不全が引き起こす変形性関節症に過ぎないのだ。

<症例提示①>

29歳女性 調理師
前医の紹介で当院受診。

S)五か月前より右上肢全体に痛みとしびれがあり、前医を受診するも症状は悪化傾向。
症状増悪時は箸が使えないほど右手に震えが生じる。
ADL: 鍋が持てない。箸の扱いに支障が出る。

O)初診時、右上肢に明らかな腱反射の異常や病的反射を認めず、上腕、及び前腕筋には圧痛と硬直あり。
肘関節伸展、手指伸展位で手指の震えを認めた。
第一肋間に著明な圧痛、同時に線維筋痛症の診断基準を満たす全身の著明な圧痛を認めた。
Thomsen テスト陽性。
体重75㎏。水分摂取量は一日2000ml以上で、水分摂取には気を付けている。
カフェインの摂取は、ほうじ茶が一杯程度。
仕事では重い鍋とPCのマウスを扱う。
前医での加療が奏功せず、不安感が強い。

A)右上腕骨外側上顆炎(テニス肘)と慢性脱水症
前腕伸展筋に圧痛と硬直が著明で、就労により、同部に疲労性の弛緩不全を生じ、上腕骨外側上顆にかかる力学的な牽引負荷が高じて発症したものと考えられた。
第一肋間の圧痛と全身の圧痛所見により、筋組織内脱水が背景にあると考えられたが、カフェイン摂取量は少量で水分摂取量は適量であるため、改めて他に何を飲んでいるかを問診した。
すると、大量のルイボスティーを摂取していることが判明し、ルイボスティーの利尿作用を疑った。

P)前腕筋の弛緩不全を解消するためのMedical Dynamic Stretchingを施行し、これを指導。
ルイボスティーをやめて、麦茶やスポーツドリンク、経口補水液の類へ飲料水を変更することと、就労時のテニス肘装具装着を勧めた。
投薬はテルネリン1錠眠前内服とアリナミンF朝食、夕食後1錠内服。消炎鎮痛剤は用いず、疼痛時は芍薬甘草湯を頓服として処方した。

初診時の段階で、MDSによって手指の震えは消失。痛みはわずかに軽減。
患者の受診後、ルイボスティーに利尿作用があることを確認。
六日後の再診時、疼痛は初診時の十分の一に激減。第一肋間、及び全身の圧痛は消失。
全身のだるさが残るとの訴えあり、テルネリンの副作用を考慮し、これを中止した。

かくのごとく、慢性脱水の痕跡を認めてから、患者の生活の仔細を問診することで、脱水の原因を特定できる場合がある。過去には、健康食品(その名も健康茶)の摂取が原因の症例もあった。
逆に、診る側に慢性脱水の知識がなければ、この患者の生活は改まることがなく、状態はより深刻になっていた可能性もある。この症例に限らず、慢性脱水に関する知識と、筋肉の弛緩不全を解消するテクニックが医者にあれば、整形外科の慢性疾患は、適切な処置によって、ほとんど薬物を用いることなく治癒せしめることができてしまう。その一方、この二つの概念を持たない医師の治療を受けた場合、患者は必要のない注射を打たれたり、鎮痛薬が長期投与されるなどした上、それでも難治性となってしまうのではないだろうか。

<線維筋痛症を患う方々へ>

思い当れば今すぐ水分摂取を
筆者の論考をご覧になって、ご自身の発症に思い当たる方々が少なからずおられるはずです。実際、筆者の外来では、線維筋痛症の診断基準を満たす患者さんの全てで、この慢性脱水状態が当てはまり、水分摂取の継続を促すだけで治癒に至ります。勿論、例外はあるかもしれませんが、寧ろ、そうした例外は線維筋痛症とは別の病気である可能性も考えられます。
もし、慢性脱水に心当たりがあれば、今すぐに水分摂取を心がけていただくだけで、数日後には治癒に至る可能性があります。現在、線維筋痛症を診ている医師は、自己免疫疾患を専門としている内科医であり、彼らもまた筋肉の慢性弛緩不全や慢性脱水という概念を知らず、病気に対する追究のアプローチにおいて的を外している恐れがあります。それ故、彼らにできるのは、せいぜい、各種症状に対して新薬を試すことぐらいなのです。
けれども、原因不明で治らないと思われている病気であっても、案外素朴な原因で起こっているものであり、頭の良い医者が、簡単なことを難しく考えすぎているだけかもしれません。

原因は一つ
疾患において原因が諸説あると医者が患者に言う際、その医者自身、原因に見当がつかないから、そのような説明が行われるのが通例です。ある程度治療経験があれば、独自の見解があってしかるべきなのです。そもそも、諸説あるというのであれば、医者の目の前にいる患者が、どの説に該当するかをいうのが本来の医者の仕事のはずです。患者の生活をつぶさに問い詰め、どの説が当てはまるかを特定して治療が行われるのであれば、患者は何も不安に思う必要がないでしょう。

線維筋痛症を見逃す整形外科医
ところが、皆様がこれまで受けてこられた治療はどうであったでしょうか。そして、今はどのような状態なのでしょうか。これまで筆者が診療にあたった患者のうち、線維筋痛症の診断基準を満たす患者で難治性だったのはほんの数例。そのいずれも発症後の経過が長く、心療内科領域の治療が長期間にわたって施されてしまっていたケースでした。その一方、他院で線維筋痛症と診断された症例も含め、残る全ての症例で水分摂取と筋肉を弛緩させる独自のテクニックだけで、ほぼ一週間以内に治癒せしめることができました。線維筋痛症患者は顎関節症だけでなく、急性腰痛症や頚椎症で発症する場合も多々あるので、整形外科医は自ずと線維筋痛症患者に遭遇する機会が多くなるのです。ただ、多くの整形外科医は線維筋痛症の診断基準をいちいち患者に確認していないので、見逃されている場合が少なくないのも事実です。

本当は治療にお金がかからない線維筋痛症
筆者の場合、患者に対しては、まず慢性脱水があるか否かを診断するところから診療を始めます。治療薬に関しても他の医師に比べて鎮痛薬の類をほとんど用いることがありません。痛みは肉体が発する警報であり、原因を取り除くことができさえすれば、やがては落ち着くものであるからです。筋肉が弛緩不全を起こす原因が各々個別に分かれるだけで、大多数は慢性脱水症が誘因となって線維筋痛症を発症するというのが筆者の持論で、治療の成果はあがっています。問題点はただ一つ。薬をほとんど使わない上に早く治ってしまうので、稼ぎにならないということだけです。

難治であることが医療サイドの収益となる
現在、線維筋痛症を治すと謳う治療家の多くは、独自の見解に基づいて治療法を提唱し、自らの営利活動につなげています。実際、難病は難病であればあるほど、治療家にとっては利益を上げることができるネタとなります。今や線維筋痛症はその名を冠する学会まで存在し、治療薬を売る製薬会社にサポートされている有様です。このような状況下では、本当に有用な考察であっても、黙殺されてしまう構造的な要因が存在するわけです。なぜなら、線維筋痛症は治らない病気であることが学会の権威を高め、医療サイドの収益につながるからです。

線維筋痛症は膠原病ではない
勿論、診療に携わる個々の医師の誠意に疑いの余地はありませんが、線維筋痛症は先天的な素因の不確かな病気で膠原病ではありえません。畑の違う医者がいくら治療と研究を試みても、宝を掘る場所が的外れなら、宝にたどり着くことはできません。筆者は自身の診療経験を知識として皆様と共有することが出来さえすれば、全てではないにせよ、かなり多くの線維筋痛症患者を救済できると確信しています。

町医者の確信
ただ、一介の町医者の確信ごときでは信ずるに足る根拠がない、権威ある医師の発言でなければ価値がないとご判断されるのでしたら、それはそれで結構です。但し、発言した内容については確信があるので、現在受けておられる治療で治癒に至らないならば是非一度試していただきたいと存じます。たとえ心療内科の治療が長期であっても、難治性であるというだけで、治る見込みがないというわけではありません。とりあえず適量の水分摂取を継続していただくだけですから、さほど皆様のご負担にはならないことでしょう。筋弛緩を促すテクニックはMedical Dynamic Stretchingと筆者が名付けた方法で、ここで詳細を公開しています。とはいえ、発症後早期でありさえすれば、そのテクニックを用いるまでもなく、適量の水分摂取に努めるだけで治癒してしまう場合が少なくないことをお伝えしておく次第です。

<どうして線維筋痛症は難病になったのか>

■整形外科学の過ち
線維筋痛症は単純に慢性的な脱水で起こる全身の筋肉に生じた弛緩不全に他ならないというのに、何故難病となってしまったのかといえば、これはある意味、整形外科学の責任だということができなくもない。
現在、整形外科領域における変形性関節症は、いずれも筋力低下によって起こるといわれ、どこそこの関節痛には、どこそこを鍛えよ、という治療が一般的だ。例えば、階段の上り下りで膝を痛がるお年寄りを相手に、スクワットをして大腿部の筋肉を鍛えるように勧めているわけである。はてさて、階段の上り下りとスクワットと何が異なるのか理解に苦しむところであり、素人が考えても、この治療の過ちに気づくことができそうなものだが、そうはならなかった。それは、整形外科医が外科医であり、起こってしまった結果をどう治療するかにばかり傾注して、病気の原因を深く考えてこなかったからかもしれない。

本当は筋力低下が原因で変形性関節症を生じるわけではない。痛めている関節をまたいでいる筋肉が慢性的な弛緩不全を生じることで、関節において過剰な力学的負荷が加わり続けることによって適応変化と関節破壊を来しているのであり、筋力低下もまた筋肉の弛緩不全によって生じた結果なのだ。筋肉の縮みしろが少なくなることで筋力低下を来しているに過ぎないのである。

つまり、結果を原因だとのたまってしまったが故に、治療があべこべになってしまったというわけだ。本当は筋肉の弛緩を促すことが治療なのだ。
こうした勘違いを引き起こした原因は、整形外科学という学問の俎上に、筋肉の慢性弛緩不全という概念が欠落していることにある。この弛緩不全は、疲労性と廃用性、どちらによっても生じ得るが、いずれも慢性的な脱水状態が筋組織内脱水を招来するために筋肉のミイラ化を促進してしまい、症状を増悪させるというわけである。

これまで、学会では筋力低下と変形性関節症の相関係数の高さばかりが示されて筋力低下が原因だとされてきたわけだが、これは両者が共に筋肉の慢性弛緩不全に端を発した結果であることを示しているに過ぎない。整形外科学の黎明期に試みられた原因と結果の解釈が間違っていたために、勘違いが勘違いを再生産して今日に至っているのが実情だといえるだろう。

■欠落した二つの概念
実のところ、線維筋痛症患者を最初に外来で診るのは、整形外科医であることが多い。それは慢性脱水による筋組織内脱水は急性腰痛症や頚椎症を引き起こすケースが多いからだ。

しかしながら、整形外科学という学問に、筋肉の慢性弛緩不全という概念と、慢性脱水による筋組織内脱水という二つの概念が欠落しているため、整形外科医は線維筋痛症の本質を見抜くことができない。
おまけに整形外科領域は、医師の習熟度が進むにつれ、診る対象が専門化されていくので、脊椎を診る医者、上肢を診る医者、下肢を診る医者と分かれてしまい、全身を系統的に診るのは関節リウマチを専門にしている医者だけとなる。このために、全身症状を患う線維筋痛症患者の場合、クリニックから病院に紹介されると、最初に診療を担当する医者が関節リウマチの専門家となってしまうのだ。
ところが、先の理由により、整形外科医には病気の本質がわからないので、患者を膠原病内科や神経内科にふりわけるしか能がないというわけだ。

■患者の悲劇
ここから患者の悲劇が始まったといえるだろう。もともと畑の違う内科医が診るのだから、病気の原因がわかるはずもなく、患者は内科医お得意の検査漬けにさらされる。急性の脱水なら、血液生化学所見上、異常を認めることができるが、慢性脱水は筋組織内脱水を来すだけで血液濃縮を生じないので、検査上は異常を示さない。患者の訴えは激烈を極めるのにも関わらずだ。もっとも、全身の筋肉が痙縮しているのだから痛がるのは当然なのだが、これは何か新しい病気に違いないというわけで、線維筋痛症と呼ばれる病気が誕生した次第である。

若くて有能な医師であればあるほど、患者の生活をみるより血液生化学検査や画像診断に頼る傾向が強く、そのこともこの病気をわからなくさせる要因となった。患者の生活の仔細を問えば、脱水が根底にあることはわかりそうなものなのだが、内科医が普段治療にあたっているのは急性の脱水ばかり、即ち血管内脱水についての知識しか持ち合わせがなかったために、原因不明となったわけである。慢性脱水に伴う筋組織内脱水は全身に症状を来し、しかも脳脊髄液減少症に付随して髄膜炎と同種の頭痛を伴う上に便秘は必発というわけで、下剤が処方されることで脱水に拍車がかかり、鎮痛薬は次々と劇薬が投与されるという始末。
痛みは肉体が獲得した警報装置であり、肝心かなめの水分補給によって筋組織内脱水が補正されなければ鳴りやむはずもない。芍薬甘草湯を飲めば筋痙縮がわずかばかり治まるが、水の不足を薬で補えるはずもなく、難治のまま。痛みのために安静を続ければ関節は拘縮傾向となり、筋肉は廃用性の変化を辿って弛緩不全が増悪する。八方塞がりの内科医は、目の前にいる患者のキャラクターにも疑いの目を向け始め(実際、あらゆる病気において患者のキャラクターは予後を左右する重大な要素となる)、痛くて眠れないという患者の訴えに応えるべく心療内科へと紹介する。そこでは脳に作用する薬が次々と処方され、警報装置そのものに支障を来すようになるという具合だ。

壊れた警報装置の回復には時間がかかる
かくして線維筋痛症は難病としての地位を不動のものとするに至ったわけである。警報装置の不具合は水分補給だけではなかなか治ることがなく、時間をかけて機能回復に努めるしかない。全身の筋肉に生じた弛緩不全が、水分補給とMedical Dynamic Stretchingによって解消されていることを、自らの筋肉を押さえて確認していく必要がある。硬さがなくなって柔軟性をとりもどすことができていれば、圧痛に変化がなくとも快方に向かっている証なのだ。その状態を保つことで、徐々に警報が鳴りやむのを待つしかない。その間を薬に頼るのは仕方がないのかもしれないが、生活を正すのでなく、体が現す症状を抑える薬ばかり内服してきたことの招いた難病が、この線維筋痛症だといえるだろう。十分な水分補給の継続でも治らない線維筋痛症があるのだとすれば、それは医者がつくってしまった難病であるかもしれない。罹病期間が長期化することで、医師からの処方をはじめ、多種多様な素因による修飾を受けてしまい、加療を難しくしてしまうのではないだろうか。近年は痛みの治療としてサインバルタが流行しているが、濫用は慎むべきだろう。

患者に病名を告げるべからず
もし、医師が線維筋痛症を疑う患者を見つけた場合、決して患者に病名を告げてはならない。なぜなら、治らない病気という地位を確立しているこの病名を告げられた患者は、医師の告知によって精神的なダメージを負い、うつ病を発症して益々難治性となってしまう場合があるからだ。実は、うつ病それ自体、脱水が誘因となって起こるという報告まである。そうでなくとも、患者がこの病気の専門家を求めてあちこちの病院を彷徨えば、さらに治療は困難となってしまう。ただ水を継続的に飲みさえすれば治る病気であるというのにだ。

故に、この病気を疑う患者に遭遇した医師は、患者の生活の仔細を問い、慢性脱水の証拠を確認したのち、その生活を正すような指導を行うだけで良い。完治した後に病名を告げ、それが難病でも何でもないことを説明して患者に安心感を与えるよう心がければ済む話であり、線維筋痛症なる難病は幻に過ぎないというのが、片田舎に暮らす町医者の揺るがぬ結論なのだ。

<水分摂取の重要性>

口渇感という幻
通常、人体は脱水状態に陥らないため、口渇中枢と呼ばれる脳の働きによって口渇感という幻をつくりだす。しかし、幼少期はその機能が未熟であるためか、体が脱水に傾いていても、さほど口渇感を覚えない場合がある。同様に、肉体の老化に伴い、口渇中枢の機能が衰退することで口渇感が不足し、十分な水分摂取を怠ってしまうようになる。男女ともに30~40代頃からその傾向が現れ始め、60代以降ではそれが顕著となる。口渇感が不足するということは、喉の渇きを満たすだけの水分摂取では脱水が必発であるということだ。即ち、老化とは体が渇いていく現象だということができるだろう。

線維筋痛症と心不全
その一方、さほど高齢でなくとも、日常の雑事に追われ、多忙な生活を送る人々の場合、口渇感を満たす飲水行為を後回しにして日々を過ごしてしてしまうため、危険な状態に陥ることがある。喉の渇きを満たすことなく睡魔に襲われて眠る生活が続けば、慢性的な脱水状態となるからだ。たまに喉を潤すことがあっても、それがコーヒーなどのカフェイン類であったり、アルコール類であったりすれば、その利尿作用でさらに脱水傾向は顕著となる。こうして脱水が慢性化することで筋組織内脱水を来して筋肉の弛緩不全を招くと、全身の関節や筋肉があちこち痛むようになる。これが線維筋痛症の正体だ。こむらがえりなどの筋痙縮を生じやすくなるのである。外来では、画像所見や血液生化学所見で明らかな異常を示さない原因不明の背部痛を訴える患者のほとんどが、筋組織内脱水によって症状を来している印象がある。なぜなら、それらはすべからく適量の水分摂取を継続することで治癒に至るからだ。この他、慢性の脱水状態は心機能に影響を及ぼす可能性も示唆される。原因不明の不整脈や心不全は、脱水に伴って電解質バランスが失調し、心房細動や心室細動を生じたものかもしれない。慢性的な脱水状態が存在することで、通常なら問題にならない程度の飲水の不足やアルコールの摂取であっても、急激に致命的な状況を引き起こしてしまうと考えられるからだ。

慢性脱水症がもたらすもの
四肢の骨格筋に症状を来すほど慢性的な脱水状態が続くようであれば、血液の粘性もまた増大し、血管が目詰まりを起こす心筋梗塞や脳梗塞をも招来する可能性が高くなる。また、慢性的な脱水は便秘症の原因ともなり得る。十分な水分が口から入ってこなければ、人体は大腸の内容物から可能な限り水分を得ようとするので、便が硬化してしまい、便秘を生じるのである。のみならず、摂取水分量の不足は排尿量の低下を伴って尿濃縮を生じ、腎臓にかかる負担が大きくなって腎機能低下を招く。そして、そこから種々の老廃物が体内に蓄積される傾向が生じると、痛風や偽通風、石灰沈着性腱板炎など、結晶誘発性の炎症性疾患を来すようになる。尿道が短い女性の場合、尿流が減少することで易感染状態となり、膀胱炎を生じることが多くなる。そして膀胱炎を患うに伴い、膀胱の内壁が過敏状態となって頻尿や残尿感を生じ、膀胱それ自体も縮小する。授乳婦は水分の必要所要量が増大しており、これに飲水が追い付かない場合は脱水に陥り、線維筋痛症を生じてしまうことがある。また、頭痛薬が効かない難治性の頭痛には、慢性脱水によって生じた脳脊髄液減少症に伴う髄膜刺激症状で、いわゆるケルニッヒ徴候に等しいものがある。さらに、慢性的な脱水によって脳それ自体の萎縮をも生じ、びまん性の脳梗塞と相まって認知症の原因となるケースも考えられるだろう。

水は第一選択の治療薬
かくのごとく、水こそ百薬の長であり、適量の水を飲み続けるだけで、随分多くの病気を未然に防ぐことができるのに、意外とその重要性が強調されることはない。それは、優れた生活習慣ほど医療業界の収益を損ねてしまうからかもしれないが、既に指摘した通り、線維筋痛症の特効薬は水に他ならない。そもそも、生物はすべからく水から生まれ、そこで育まれた後、陸上を生活圏とするものが現れるようになったのであり、水分摂取を疎かにすれば、健康に支障を来すのは当然である。水さえ飲めば治るものを、あれやこれやと症状を抑える薬を飲めば、体はさらに病を患うことになるだろう。水の代わりになる錠剤など存在しないのだから。

脱水のモニタリング
慢性的な脱水があるか否かを診る目安は皮膚の湿潤状態をみる他に、第一肋間の圧痛の有無が重要だ。重篤な筋組織内脱水を呈しているような症例では、そこに著明な圧痛を示すからだ。体重50キロあたり、1500ml(食物中の水分込み)が一日の最低摂取水分量の目安となるが、個々の生活状況に応じて必要量はそこから増えることになる。屋外で過ごす時間が長ければ必要量は増大するし、発汗量の多い環境なら尚更だ。そういう場合は、尿量と尿の色で脱水状況をモニタリングすればよい。少なくとも二時間前後でまとまった量の排尿があり、尿の色が透明に近ければ問題ないが、数時間排尿がなかったり、排尿があっても少量で濃い色をしているようなら脱水だ。夏季は子供とお年寄りが脱水で死んでしまう季節であり、飲水量に関しては特に注意が必要である。

水と塩を摂ること
実は、発汗量の多い運動選手にとって最適な飲み物はスポーツドリンクではない。スポーツドリンクは甘すぎる上にナトリウムが不足しているからだ。スポーツ選手は発汗によってナトリウムを大量に喪失するので、スポーツドリンクで水分を補うと血糖ばかりが高くなる一方、低ナトリウム血症を来して必要なだけの水分を摂ることができなくなってしまう。要するに胃にもたれて水分を欲しがらなくなってしまうのだ。人間の口渇感は血中の塩分濃度でコントロールされているため、低ナトリウム血症に陥ると、脱水状態であっても喉が渇かなくなってしまう。ラーメンのスープをすすった後で喉が渇くのは、この逆の現象だ。よって、真水だけで水分を摂ると低ナトリウム血症に傾いて必要なだけの水分を摂る事ができなくなってしまうので、適度に塩分を含んだ飲み物が必要になるわけだ。故に、発汗量の多いアスリートなら経口補水液の摂取が推奨される。食事の際にお椀物をつけると良いだろうし、お茶であれば昆布茶や麦茶を交互に摂るのもお勧めだ。但し、一度に大量の水分を摂取しないこと。急激に大量の水分を摂取すると、下痢をしたり、循環器に過剰な負荷となって血圧の上昇を来す恐れがあるからだ。勿論、利尿作用の強いカフェインを含む飲み物やアルコールは控えた方が良いし、それらを摂取する場合、必要量にその分を上乗せしなければならない。

タイムラグ
さて、かくのごとく毎日水分摂取に努めたとしても、慢性的な脱水状態が改善されるのには時間がかかる。急性の脱水で問題となる循環血漿流量の減少は水分補給で速やかに回復するが、過剰分がすぐに排泄されて血圧が維持されるため、慢性の脱水を反映する筋組織内脱水の補正には、40歳位で約1週間、70歳位で約2週間程度かかる印象だ。ゆえに、MDS(Medical Dynamic Stretching)も、その間は効果が乏しいが、筋組織内脱水が補正されれば、著効するようになる。厄介なのは、整形外科を受診する初診の外来患者のほとんどが、この慢性脱水状態であるため、MDSの効果が乏しく、なかなかこれで治るという実感を得てもらうのが難しい場合のあることだ。治す方法を伝えることはできても、それを実行してもらう難しさと直面せざるを得ないのである。

<トミー・ジョン手術は必要なのか>

■画像所見は原因にあらず
メジャーで活躍する大谷選手が肘関節の内側側副靭帯損傷のため、トミー・ジョン手術を受けるのだという。しかしながら、MRIで内側側副靭帯にいくらか所見があるからといって、それが症状の原因だとは限らない。画像所見は本当の原因ではなく、引き起こされた結果の一つに過ぎない場合も多いからだ。

■原因は前腕屈筋群の弛緩不全
メジャーのボールは滑りやすいので、指先にこめる力が強くなった結果、前腕屈筋群に弛緩不全を生じたことが痛みの原因だとも考えられる。
そうであるなら、適切な水分摂取の習慣を身につけ、前腕屈筋群の弛緩不全をMedical Dynamic Stretchingでメンテナンスすれば、あとは3週間から3か月程度の日にちをかけるだけで治るかもしれない。

整形外科学の盲点
残念ながら、今日の整形外科学には、筋肉の弛緩不全の持続が病気や怪我を招き、それらを難治化させるという洞察が欠落しているため、整形外科疾患を患う整形外科医も数多い。病気の本質を理解していないから、いかに高名な外科医といえども自らの病気を予防することができずにいるのである。ゆえに、不適切な治療や不必要な手術が横行しているのが現状だ。

靭帯の自然治癒
脱臼に伴う靭帯の広範な断裂は別として、それが軽微な部分損傷である限り、通常、靭帯は自然修復される。自然治癒が滞るとすれば、それは原因であるところの筋肉の弛緩不全や投球フォームの不具合が解消されないていないからではないだろうか。肘関節以外の他の部位に生じた筋肉の弛緩不全が投球フォームを狂わせている場合も多々ある。受傷機転を踏まえると、大谷選手にとってトミー・ジョン手術が本当に必要な手術であるのかという点については些か懐疑的とならざるを得ない。米国は過去にロボトミー手術がさかんに行われた経緯に対する反省が足りないのではないか。

術後一年のリハビリを要する手術とは
この手術には術後一年以上のリハビリを要するというが、そもそも、一年も投球を休めば症状は緩和ないし、治癒するはずで、手術することなくMedical Dynamic Stretchingで加療したグループと手術したグループとの治療結果に関する比較検討は行われていない。もっとも大事な比較研究がなされていない以上、安易にこの手術がトップアスリートに施されるべきではないだろう。

<ダイハツ・ヨネックス・ジャパンオープン2018観戦記その3>

さて、その試合中、興味深いシーンがあった。レシーバーとなった奥原選手が、相手に「待て」のポーズをとっているのに、マリンがサーブを放つシーンが度々あったのだ。これに奥原選手が注意するよう審判に促したところ、対する審判の判断は意外なものだった。何と、むしろサーバーを待たせた奥原選手のマナーの方が注意される結果となったのだ。

通常、日本では相手の準備を待たずにサーブを放つことがマナー違反であるという考え方が支配的だが、国際ルール上は遅延行為をマナー違反と考えているので、こういった裁定となるのだ。古来より、勝負の世界では相手を待たせた方が有利となることが知られており、宮本武蔵が佐々木小次郎との勝負を遅刻したのもそれが理由であったとかなかったとか。相撲でも、立ち合いは、いかにして相手を待たせる状況をつくれるかで間の取り合いが生じる。奥原選手は数々のルーティーン・ワークでこの間合いをつくり出すのを得意としているが、今後はそこに時間をかけることを注意される機会が増えるかもしれない。

個人的には、どちらかといえば国際ルールの考え方に賛成で、レシーバーはサーバーの準備が整っているなら、相手を待たせず直ちに構えるべきだと考える。なぜなら、レシーバーはサーバーにやり直しを要求できるが、サーバーは審判がレシーバーに注意しない限り、相手の遅延行為を我慢するしかなく、アンフェアであるからだ。今後、本当のマナー違反は相手を待たせる側にあるという認識が一般的となってくるかもしれない。

かくして、奥原選手のウィニングランとはならず、幾分残念な感はあったが、それでも、リオ五輪金銅メダリストたちの目いっぱいのプレーが観られて満足だった。奥原選手は怪我が多く、元気な状態の試合を観られる稀有な機会であったのは間違いないからだ。帰宅予定時間を考えると、次の男子ダブルスを最後まで観られるかどうかは微妙だったが、インドネシアのギデオン・スカムルヨペアは相手の中国ペアを第一ゲームから圧倒し、その実力をいかんなく発揮する展開となった。彼らの躍動的なプレーは昔の強豪、リッキー・マイナキーペアを彷彿とさせるもので、オジサンには何かしら懐かしかった。彼らの大活躍のおかげで5時半には試合が終了し、最後まで試合を見届けることができた。先輩の観戦席はコートを挟んで反対側だったため、ショートメールで別れを告げると、そそくさと会場を後にしたのだった。

帰りの電車は飛田給駅から各駅停車に乗り込んだが、この電車に乗り込んで出発を待っていると、見覚えのある中年夫婦が車内に乗り込んで来た。奥原選手のご両親である。心中を慮って声をかけることは憚られ「お嬢さんは良く頑張りましたね」と心の中で称賛するにとどめておいた。実は今年、奥原選手にはいくばくかご縁があり、夏に開催された医師バドミントン大会では奥原選手のお兄さんと対戦することができた。妹さんによく似たイケメンであったのが印象的だった。京王線では調布で特急に乗り換える手はずだったが、これをしくじったので、予定より新宿到着が遅れてしまった。

そこで京王電鉄さんへお願い。
せっかく東京五輪バドミントンが開催される特別な場所の最寄り駅なのだから、乗り換えなんて野暮なことをしなくて済むよう、飛田給駅にも特急、準特急をとめてくださいな。

<ダイハツ・ヨネックス・ジャパンオープン2018観戦記その2>

桃田選手のウィニングランの後、先輩のところに行こうと試みたが、すぐに女子ダブルスの試合が始まったため、席に戻らなくてはならなかった。福島広田ペアの試合もまた、ランキング一位を証明するかのような圧巻の試合運びだった。世界選手権は後輩が決勝戦の相手で受け身に回ってしまったためにタイトルを逃したのが気の毒ではあったが、この大会ではその実力を十分に発揮する形となった。それにしても、こんなに日本バドミントンが強くなろうとは、我々の世代にとっては夢のような出来事としか言いようがない。かつて、日本女子バドミントンが隆盛を極めた時代があったとはいえ、それはまだ中国が参戦していなかった頃の話だ。甲乙をつけるのが無粋であることは承知の上だが、現在の日本女子チームこそ、史上最強といえるのではないだろうか。

女子ダブルスのウィニングランの後、先輩と待ち合わせをし、ミックスダブルスの試合時間をつぶして会場を見て回ることにした。限定商品を買うために行列に並び、商品注文ではヨネックスの保原選手のお世話になった。その後スマッシュ五回を打って景品を獲得するコーナーにチャレンジした。より鋭角的なスマッシュに高得点が与えられる仕組みで、先輩の先に小生がトライするも、思ったような角度がつかず景品を逃してしまった。しかし、これを観て学習した先輩が連続ジャンピングスマッシュで見事景品を獲得。流石としか言いようがなかった。先輩は学生時代、医学部とはいえ西日本で全三種目制覇の偉業を成し遂げた猛者で、結果の違いには納得せざるを得なかった。トスをあげてくれた女性は見覚えのあるかつてのバドミントン選手だった。まるで中学生のように会場を満喫した中年オジサン二人は、チャレンジを終えると慌てて観覧席へと向かったが、既にお目当ての奥原選手の試合が始まっていたのだった。

着席すると試合はまだ第一ゲームの序盤で点数は拮抗していた。奥原選手は気合も十分、強敵マリン選手を相手によく頑張っていた。これまでの対戦では、マリン選手が幾分奥原選手を苦手としていた感があったが、復調したマリン選手を、奥原選手がどう攻略するのかが見物であった。試合は要所で自滅したマリン選手の失点により、奥原選手が先に19点をせしめたが、最後の競り合いでマリン選手に逆転を許してしまった。会場を重苦しい空気が満たしたが、それを吹き飛ばすかのように地鳴りのような応援が奥原選手に注がれることとなった。この声援の大きさは決してテレビでは伝わらない、ライブ観戦ならではの醍醐味だ。そして第二ゲーム、今度は接戦を奥原選手がものにした。本来ならスタミナに自信のある奥原選手がファイナルを制するはずである。しかしファイナルゲームは序盤でいきなりマリン選手が大量リードを広げてしまう。奥原選手の決め球であるクロスカットにマリン選手がクロスヘアピンで対抗し、ヘアピン勝負でもネットインにネットインで返す究極の攻防をマリン選手が制した結果だった。紙一重の差が重なったに過ぎないが、これが現在の実力差なのかもしれない。終盤は互角となったが、結局、序盤の大量リードに守られたマリン選手が勝利することとなった。

<ダイハツ・ヨネックス・ジャパンオープン2018観戦記その1>

近年、国際バドミントン大会では、日本人選手が決勝戦に残るケースが飛躍的に増加してきた。この流れは東京五輪に向けた日本バドミントン界の努力と選手個人の研鑽によるもので、年に一度、秋季に東京で開催される国際大会、ジャパンオープンでも同様の現象が起こるに違いないと予想された。

前回、ヨネックス・オープン・ジャパンをレポートしたのは2015年で、その時は女子シングルス決勝で奥原、山口両選手の日本人対決を観戦することができた。観戦記の締めくくりに、次回は桃田選手か大堀選手の決勝戦で再び観に来ることを誓っていたが、それを果たすべく、今年の7月、チケットを購入することを決めたのだった。購入したのは最終日の決勝戦のみ。それ以上は細君の許可が得られそうになかったためだが、果たして、決勝三種目で日本人が残る快挙となり、目論見は首尾よく達成されることとなった。偶然ながら、今夏の医師バドミントン大会でダブルスを組んだ先輩もまた、この日のチケットを購入していたことが事前にわかり、当日、会場でお目にかかる約束をしたのだった。

9月16日、朝5時起床。前日に予約しておいたタクシーに乗り込み、薄暗い中を岡山駅へ。みどりの窓口で往復の自由席を購入し、予定通り6時始発の新幹線“のぞみ”に乗り込むことができた。東京駅でJR中央線に乗り換え、新宿駅へ。新宿駅からは京王線準特急で調布まで行くと、そこから各駅停車に乗り換えて飛田給駅へと向かう。飛田給駅で下車し、駅の出口に設置してある地図で会場を探すのだが、味の素スタジアムはあるのに、老眼のためか武蔵野森総合スポーツプラザの表記が見当たらない。仕方なくSiriに尋ねて現地へ赴くことに。
徒歩数分で現地到着。味の素スタジアムはその向かいだった。入口の限定品販売コーナーで現役を引退した今別府選手を発見し、俄然、ハイテンションに。前回観に来た際の苦い経験から、今回は予めプレミア席を購入しておいたのだが、やはりこの席は快適だった。残念だったのは最後尾であったことだが、贅沢はいえない。

会場到着は11時前。桃田選手の試合が迫っていたので売店で昼食と飲料水を購入し、試合前に腹ごしらえを済ませた。そして11時半、ついに待ちに待った桃田選手の試合が始まった。相手はフェトラダブ選手。これまで見たことも聞いたこともないタイ王国の新人選手だったが、中国の強豪、シーユーチー、チェンロンを破って勝ち上がってきただけあって、極めて完成度の高い選手だった。要するに粗がないのである。一方、桃田選手の試合の特徴は、極端にクリアーが少なく、ヘアピンとカットが多用される独特のものだったが、この大会は普段より幾分クリアーも多く、派手なジャンピング・スマッシュも多い展開で、ヘアピンが少ない分、絶妙なロブで相手を揺さぶるシーンが数多くみられた。フェトラダブ選手を相手にした場合も同様で、変幻自在のロブが多用される展開となった。やはり、桃田選手はロブが上手なのだ。

プレミア席から観る試合は、クリアーやロブの高さの違いがわかり易く、選手の戦術がつぶさに観察できて興味深かった。やはり、テレビカメラの視点とはまるで異なる。試合は序盤こそ競り合うものの、後半は桃田選手がリードする危なげない展開で、第二ゲームも、中盤から一気にポイントを重ねた桃田選手の圧勝だった。勝利の瞬間、コートに四つん這いになった桃田選手の仕草に、ここまで平坦ではなかった彼の胸中が表れていてオジサンの胸を熱くしてくれた。個人的には、件の不祥事については、若い彼には過分なペナルティーが科せられたと感じていたし、リオ五輪にも出て欲しかったので、彼のことを気の毒に思わずにはいられなかった。
しかし、カムバックした彼の躍進の起爆剤として、あの苦い経験が生かされているなら、それもまた良しだ。処分に腐ることなく生真面目に努力を続けた結果、ここまで成長したのだから。今の彼は、世界の強豪の中でも、頭一つ抜け出ていることは明らかだった。その一方、彼の勝利を喜ぶ半面、ここからの道のりの険しさに同情せざるを得なかった。東京五輪までの二年間は、ずっと追われる立場となるからだ。その重圧に耐えることは余人の想像を超えているが、それを乗り越えるために必要な試練として、あの事件があったのかもしれない。

<診断材料としてのMDS>

■疾患の理解
Medical Dynamic Stretchingを施行するようになって、これまで原因不明と言われていた種々の整形外科疾患に対する理解が深まった。医学は概ねそれらを弁別することを専らとする学問であるが、ここでは逆に、ばらばらに考えられていた病気の共通項を整理してみる。

■筋肉それ自体の圧迫を受けて起こるもの
まず、弛緩不全を呈した筋肉それ自体が神経を圧迫する病気として、梨状筋症候群(坐骨神経痛)やモートン病、手指の末梢神経障害がある。これらにはいずれもMDSが奏功する。

■牽引力が作用して起こるもの
次に、筋肉の弛緩不全が骨格の付着部に牽引力として作用することで生じる病気としては、小児ではオスグッド病やジャンパー膝、分裂膝蓋骨、セーバー病、成人では慢性腰痛症、腰椎分離症、上腕骨外側上顆炎、腸脛靭帯炎、鵞足炎、アキレス腱炎、腓骨筋腱炎、有痛性外脛骨症などが挙げられ、MDSが著効する。
また、筋肉の弛緩不全による牽引力が間接的に作用することで生じる病気として、ケルバーン氏病や弾発指、肘部管症候群などがあり、それらは病初期であればいずれもMDSが著効する。

■軸圧が作用して起こるもの
一方、筋肉の弛緩不全が関節に対する軸圧として作用することで起こる病気としては、小児では単純性股関節炎がその代表で、成人では手背ガングリオン、へバーデン結節、変形性膝関節症、変形性股関節症、腰椎椎間板ヘルニア、変形性腰椎症、フライバーグ病などが挙げられる。いずれもMDSが有効だ。

■MDS無効例
逆に、MDSが無効である症例は重度の筋組織内脱水と骨折である。病初期に骨折があるか否かレ線所見だけでは判断に苦慮する場合、MDSが有効であるか否かは診断に有用だ。
無論、骨折や骨挫傷はMRIによる画像診断では明らかとなるが、レ線所見と問診だけでは必ずしも骨折を疑われない症例がある。大した外力が加わっていないと考えられても、骨粗鬆症を背景に骨折を来している場合があるのだ。実際、脊椎圧迫骨折は医師による見逃しの多い怪我の一つである。圧迫骨折のごとく、軸圧が骨格の構造強度の閾値を超えて作用すると起きるものは、他に脛骨近位部に生じた水平骨折や骨挫傷が挙げられる。これも脊椎圧迫骨折と同じく見逃しの多い怪我の一つで、変形性膝関節症として扱われてしまう場合がある。

■大腿骨頭壊死症とは
同様に、特発性大腿骨頭壊死症として扱われる症例の中には、軸圧が高じて生じた大腿骨頭の骨挫傷や骨折が含まれているに違いない。骨頭内の損傷が同部の血流不全を生ぜしめるのだ。レ線所見では骨傷が不明瞭なそれらは変形性股関節症の初期症状として扱われてしまう場合があるが、初期骨折に対してはMDSが無効であるため、本当の変形性股関節症と区別し得るのだ。筋組織内の脱水が解消されているにも関わらず、痛みに対してMDSが無効ならば、骨折を疑ってしかるべきだ。MDSは治療としてだけでなく、診断の一助としても有用なのである。

<整形内科学のすすめ>

外科医の勘違い
筆者がMedical Dynamic Stretchingの理論やテクニックについて、同業者である整形外科医に話をすると、「医者が柔道整復師や理学療法士の真似をするのか」と、驚き呆れられることがしばしばある。それは主に注射や手術といった侵襲的な治療を行うのが医者の仕事であると思い込んでいる人たちからであるが、本来、患者にとって理想的な医者とは、自分の病気の根本原因をつきとめ、手術も注射も、そして内服薬さえも用いることなく治してくれる治療家のことではないだろうか。それらの治療はどれも、患者にとっては苦痛をともなうからだ。

治せない医者
昨今の報告でも明らかにされたように、整形外科医の治療に満足している患者の比率は、整形外科医が思っているほど高くはない。それは整形外科医が症状の軽重で患者を分別し、軽症患者に対する扱いを粗雑にしているからだ。その結果、整形外科を受診した患者の多くが治っておらず、代替医療に逃れているのである。そうなる理由は、筋肉の慢性的な弛緩不全が病気の原因になるという洞察が整形外科学に欠落しており、外科医が、起こってしまった結果をどう扱うかばかりに傾注して、病気の原因に対する追究を疎かにしているからだ。この意味で、整形内科学の発展こそ急務だといえるだろう。

生活の中に病因あり
実際、昨今の目新しい治療の多くもまた、大抵、それらがどうして奏功するのかという細かい理屈は後回しにされている。だから、しなくてもよい注射や手術が横行し、治療は混迷を深めているのが現状だ。
病気の原因のほとんどは患者の生活の中にあるのであって、画像所見や血液生化学所見といった検査データの中にあるのではない。ゆえに、患者の生活をみようとしない医者は、一時的に病気を治すことはできても、患者を救うことはできない。患者の生活の仔細を問い詰めなければ、病気の原因はわからない。原因がわかっていないのに薬を処方し、注射を打ち、果ては必要のない手術を行う医者は詐欺師と変わりがない。今日、線維筋痛症が何故難病であるかといえば、それは医者が患者の肉体と生活をみようとせず、検査で患者をみようとするからだ。もし、患者の身体に触り、その生活をつぶさにみるならば、そのほとんどが慢性的に生じた筋組織内脱水に付随した全身の筋肉の弛緩不全であることに気づけるはずだ。

最良の医者とは
病気の原因を考えない外科医は、いずれ自らも整形外科の怪我や病気を患うことになるだろう。そして、それを歳のせいだから仕方がないと思って諦めていると、やがては手術を必要とする程に悪化していくことになる。そのとき初めて、本当にありがたい医者とはどういうものかを考えることになるのかも知れない。侵襲を加える治療が医者の仕事ではないのだ。患者にとって最良の医者とは、病気を治す医者ではなく、病気にならずにすむ方法を提案してくれる医者なのである。

<原子力ムラにとって「不都合な真実」>

<ネット記事より引用開始>
原子力ムラにとって「不都合な真実」となるふたつのニュースが埋もれてしまっていると、『週刊プレイボーイ』でコラム「古賀政経塾!!」を連載中の経済産業省元幹部官僚・古賀茂明氏は指摘する。

* * *

とても大切なことなのに、メディアの報じ方のせいで埋もれてしまうニュースは少なくない。

「温室効果ガスの排出量 2年連続で減少」というニュースもそのひとつだ。

環境省が先月中旬に発表したデータによれば、2015年度の日本の温室効果ガス排出量は前年度比2.9%減の13億2500万tだった。

しかし、今回の新聞の報道では重要なことを報じていない。まず、温室効果ガス(フロンなどを含む)のうち、いちばん大事なCO2だけを見るとマイナス幅は3.4%と拡大する。さらに、電力などのエネルギー転換部門に限定すると、6.4%もの大幅減少だ。

そして、15年度の実質経済成長率はプラス1.3%だった。つまり、経済成長しても電力部門のCO2排出量が大幅に減少したのだ。これは極めて画期的なことだ。

思い出してほしい。安倍政権は福島第一原発事故の教訓も忘れ、原発再稼働へとひた走ってきた。その理由として主張してきたのが以下の3つだ。

原発が停止したままだと、

(1)電力不足になる。

(2)電気代が高くなる。

(3)CO2などの排出量が増え、昨年、閣議決定した目標(2030年度の温室効果ガスを、13年度比で26%減)を達成できない。

だが、原発事故以降、日本中のすべての原発が停止しても(1)の電力不足は起こらなかった。

また(2)の理由、原発はほかの発電方式に比べてローコストという売り文句も通じなくなってきた。近年、自然エネルギーが普及し、今やデンマークや中東、南米などでは、風力や太陽光発電のコストがkW当たり6円を切るというニュースが続いている。

安全対策や廃炉などに巨額の費用がかさむ原発の発電コストは上昇を続け、今や少なく見ても10円超。もはや原発はローコストどころか、ハイコストの代表だ。

そして(3)の、CO2を排出しない原発なしには温室効果ガスを削減できないという主張も、環境省の最新データによって覆された。何しろ原発をほとんど止め、CO2を多く出す火力発電をメインにして経済成長しても、CO2の排出量が大幅に減っているのだ。

その要因は工場、オフィス、家庭などで省エネ化や自然エネルギーの普及が進んだためだ。これは安倍政権と原子力ムラにとって「不都合な真実」である。このニュースについて報道量が少ないのは、そのためなのだろう。

報道の少なさが気になるといえば、北朝鮮有事の際の“原発リスク”についてもそうだ。

この間、安倍政権は北朝鮮からのミサイル攻撃のリスクを声高にあおり、国民に「地下鉄に逃げ込め」と呼びかけた。一方、原発がミサイルやテロ攻撃されるリスクについては、だんまりを決め込んだままである。

まともに防御対策を立てれば、住民避難計画の作り直しはもちろん、核燃料プールの地下埋設や警備員の配備などを迫られ、原発再稼働ができなくなるからだ。

この安倍政権のダブルスタンダードを指摘する報道はほとんどない。経済成長しても温室効果ガスが減ったというニュース。そして北朝鮮のミサイル騒動ニュース。

このふたつのニュースから導ける結論はただひとつしかない。それは原発の再稼働は今すぐにやめることである。

●古賀茂明(こが・しげあき)

1955年生まれ、長崎県出身。経済産業省の元官僚。霞が関の改革派のリーダーだったが、民主党政権と対立して2011年に退官。5月29日に新著『日本中枢の狂謀』(講談社)が発売予定。『Synapse』にて動画「古賀茂明の時事・政策リテラシー向上ゼミ」を配信中
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<Medical Dynamic Stretchingの実際⑧救済>

引退したアスリートの危機
問診票で患者のスポーツ歴を調べるようになって、過去にアスリートとしての経験が濃密な患者程、引退後に急激な身体的不調を患っている傾向が強いということに気づかされた。おそらく、引退によって急速な神経伝達機能の低下を来し、アスリートとして築き上げた強靭な筋肉が弛緩不全を生じて、通常人よりも過大な負荷が骨格に加わることで、関節破壊を招いているものと考えられた。

鍛え上げた肉体が仇となる
特に顕著な破壊をみるのは腰椎と股関節だ。アスリートは、その競技能力が高ければ高い程、腸腰筋が発達しており、その弛緩不全によって腰椎と股関節に過剰な軸圧が加わることで、そこに破壊的な変化を来してしまう。つまり、かつて鍛え上げた筋肉が何らメンテナンスを受けることなく放置されている肉体程、骨格の異常を招いてしまうわけである。それは回遊魚が泳ぐのをやめると死に至る様によく似ているといえるだろう。アスリートは、引退後も安易に競技を絶つべきではないのかも知れない。

筋力強化の意義
さて、今回のシリーズでは、筋力強化が整形外科疾患の予防や治療にはほとんど役に立たないことを主張してきた。しかしながら、筆者が筋力強化を怠っているかと言えば、そうでもない。それは怪我の予防や病気の治療のために行っているのでなく、あくまで筋力強化のために行っているのである。つまり、健康のために筋力強化があるのではなく、健康以上の何事かを追求した先にそれがあるに過ぎない。そもそも、筋力強化は怪我や病気を引き起こす可能性が多分にあるわけで、アスリートなら誰もがそれを知っているだろう。怪我を負ってしまう可能性のある方法が、予防法や治療法として、ふさわしいはずがないのである。

まずは試すこと
ゆえに、安全性と汎用性が高く、かつ安価で効果的な予防と治療の方法はMDSだということができる。アスリートが肉体を鍛える際には、必ず間にMDSを挟むべきだ。他方、MDSは競技直前や競技中のインターバルに行うのも有用だ。それは速やかに肉体の疲労を取り除き、勝負を有利に運ぶだろう。また、引退したアスリートが肉体の崩壊を予防する方法としても最適である。MDSに関して、議論や躊躇は時間の無駄だ。まずはこれを試し、本稿の正当性を吟味していただくのみである。

<Medical Dynamic Stretchingの実際⑦注意点>

本当の治療とは
近年、インターネット上では柔道整復師たちが異口同音に、筋力強化が治療法として間違っていることを堂々と宣言し始めている。彼らは整形外科学に染まっていないので、自分たちの実感に基づいて筋力強化が間違っていることを悟ったのだろう。まじめに治療家として研鑽を積んでいれば、気づいて当然の話。本当は筋力強化ではなく、筋肉の弛緩を促すことの方が治療になるのだ。

排尿過多でも飲水を
今回のシリーズでは、MDSを有効に用いる条件として、水分摂取の重要性を繰り返し述べた。筋肉内に十分な水分が確保されるようになると、MDSの効果を得やすくなるだけでなく、その持続時間も長くなるのである。しかしながら、患者に水分摂取を促してしばらくすると、決まって「トイレに行く回数が増えて困る」というクレームを頂戴することになる。血管内脱水を生じると、人間の体は筋組織から水分を引き出して循環血漿流量にあてがうホメオスタシスが働く一方、水分を補給して血管内のオーバーフローを招くと、人体は直ちに排尿によってそのバランスを保つようになるためだ。かくのごとく、水分摂取に努めたからといって筋組織内の脱水が速やかに改善されるには至らず、日にちを要することになるので、本当は「トイレに行く回数が増えて困る」くらいでちょうど良いのである。但し、高血圧症を患っている患者の場合は注意が必要だ。頻回の水分摂取によって血圧が上昇してしまう場合があるからだ。このあたり、日本の政治と同じで、あちらを立てればこちらが立たずという具合に、人体のかじ取りをするのは困難を伴うといえるだろう。

嗜好品の害
また、コーヒーや緑茶のようなカフェインが脱水を招くという指摘に対し、アンダーバランスを補うべく、次々とカフェインを摂取すればそれで良いではないかという意見があるかも知れない。しかしながら、次々に飲み続けても、次々に体から水分を絞り出してしまうのがカフェインの怖さである。結局、眠っている間に水分を補うことができないので、慢性的に脱水が進み、筋組織内脱水に至るわけだ。それは勿論、アルコールの摂取も同じである。
確かに、こうした嗜好品と脱水との因果関係を証明することは難しい。なぜなら、先述した通り、それらの利尿作用に対しては、筋肉臓器に蓄えられた水分で循環血漿流量が補充されるからだ。しかしながら、利尿作用を有する物質の継続的な摂取によって、たとえ血管内脱水が認められなくとも、筋組織内の脱水が進行するため、病気に至るのである。
また、経験的な話で恐縮だが、カフェインの過剰摂取は筋組織内脱水だけでなく、石灰沈着性腱板炎をも誘発する。石灰沈着性腱板炎の治療にはタガメットが有効であることは周知の事実だが、タガメットを投与しても、カフェイン摂取の制限を同時に行わないと難治化してしまう場合があるのだ。ゆえに、石灰沈着性腱板炎の場合、カフェインの制限と薬物療法に加え、二次的に生じた肩関節周囲筋の弛緩不全を水分摂取とMDS で軽減せしめる治療が必要となる。

生活習慣の改善を
総じて、カフェインやアルコールを嗜好する傾向があり、一日の摂取水分が各々の必要所要量に比して少ないタイプが整形外科の患者になりやすい。そこに喫煙習慣が伴えばなおさらだ。喫煙は筋組織内の血流不全を招くからである。筋肉に生じた弛緩不全が整形外科疾患を引き起こすという視点があれば、それらは至極当たり前の話ではある。しかしながら、今日の整形外科学にはそういう視点が欠けており、このために整形外科疾患を患う整形外科医も後を絶たない。ゆえに、ロコモの予防などと騒いでみたところで、整形外科医が筋力強化を治療だと盲信し続ける限り、今後も患者は順調に増え続けるに違いない。

<Medical Dynamic Stretchingの実際⑥頸椎>

フローズン・ネックの治し方
ある朝突然、起床時から首の痛みで頸椎が可動域を失い、借金があるわけでもないのに首が回らなくなってしまう病気がある。小児の場合、リンパ節炎を原因とする炎症性斜頸であることも考えられるが、成人の場合、ストレート・ネックや後弯の重症化によって生じている場合が多い。それはフローズン・ネックとでも呼ぶべき頚椎の硬直した状態で、主に斜角筋の弛緩不全によって生じているため、斜角筋をターゲットにしたMDSが著効するのであるが、初診時には筋組織内脱水が高じている場合が多く、無理やりMDSを試みるべきではない。急性腰痛症の場合も同様に、いったんは多めの水分摂取(体重50キロあたり1500~2000ml/day)を促し、筋組織内脱水の補正を行ってから、MDSを行う方が良い。筋組織内脱水の補正には最短でも二、三日を要するので、然る後にMDSを行うと良好な成果を得ることができる。その間は消炎鎮痛剤の処方もやむを得ないが、基本的には痛みに応じて安静を保つ必要がある。

MDSの前に脱水の補正を
実は、フローズン・ネックや急性腰痛症を患う症例では、大抵、線維筋痛症の診断基準を満たしている。これまでにも述べた通り、線維筋痛症は筋組織内脱水によって全身の筋肉に弛緩不全が生じている状態だと考えられ、頚椎症や急性腰痛症では重度の筋組織内脱水が根底にある場合がほとんどなのだ。患者は、たまたま頸椎や腰椎に激痛を伴っているに過ぎず、本当は全身の筋肉に弛緩不全を生じている。よって、それらは、いかなる投薬よりも、水分補給が著効するのである。時折、年齢的に若く、これといった画像上の異常もなく、内科の病気があるわけでもないのに頑固な背部痛や側胸部痛を患う症例に遭遇する。実は、こういう症例もまた、筋組織内脱水を誘因としている場合が多く、脱水を補正して腸腰筋や斜角筋、肩甲骨周囲筋に対してMDSを行えば短期間に治癒に至るのである。

頸椎におけるMDS
では、斜角筋に対するMDSの詳細を説明しよう。まず、仰臥位をとり、頸椎の生理的前弯に沿うように頸椎後方に枕を入れ、下顎がやや上を向く軽度伸展位をとる。この姿勢から頸椎の屈曲、伸展運動を繰り返し行う。名前を呼ばれて頷く程度の小さな動きであることが肝心だ。次にいやいやをするように無理のない小さな動きで頸椎の回旋を行う。これはアシスティブに行っても良い。最後に、そうかしらと小首をかしげるかの如く小さく左右に側屈を行う。この動きはできない患者も多いので、アシスティブに行う方が良い。いずれも振幅は5度から15度程度、10回ずつを5回通り行う。これを一日に数回行うと、斜角筋をはじめ、頸椎周囲の筋肉が弛緩する。痛みに応じてできるだけ小さな動きで行うことがポイントだ。運動のリズムは約2ヘルツ。このストレッチは肩こりや、交通外傷である頸椎捻挫の亜急性期以後の治療にも用いることができる。MDS施行の前後で斜角筋を押さえて圧痛の有無を比較してみると、このストレッチの効果が明瞭となる。基本的に神経根症状が強い場合、MDSは禁忌だが、痛みのない可動域で行うなら良いだろう。

薬物療法の意義
MDSは筋組織内脱水を補正してから施術するのがポイントで、脱水の補正に要するまでの期間は薬物療法でしのいでも良いだろう。しかし、筋肉の弛緩不全を改めずにペイン・コントロールのみに走れば、よからぬ結果を招くのが当然の帰結である。自然治癒力が円滑に働く環境を整えることこそ医師の仕事であって、医師が患者を治しているわけではないという謙虚な姿勢が治療家に必要なのだ。
痛みは生命が長い時間をかけて獲得した警報装置である。警報がやかましいからと言ってこれに蓋をすれば、将来の損失は過大とならざるを得ないのだ。消炎鎮痛剤やリリカ、トラムセット、サインバルタのような薬を安易に処方することは、警報に蓋をしてしまう行為に等しい。ゆえに、筋肉の弛緩不全が病気を招くという概念が全く顧みられることなく、これらの薬剤が用いられるのは大変危険なことだ。よって一日も早く、王様は自らが裸であることに気づく必要があるだろう。